なぜ戦うのか、今でもはっきりとミアには答えられなかった。

「おお、泣きっ面晒しおってからに……まったく坊主はこれだからいかんっ」

「ジーク……」

「……。甥のガングレドはあなたを愛した」

「……知っている」

「応えてやれそうかな?」

「……ああ」

「よかった。それが聞けて、私の心残りがなくなったよ」

 ただ、ハッキリと目に焼き付いたことがあった。

 彼女の死。

 あの日の夕焼け。

 仲間の死。

 ガングレド……タクト……俺の友達。

 多くのものが俺の中でぐるぐると渦を巻いて、俺の背中にのしかかり、そして俺の脚を進ませていく。

 重たい、重たく苦しい。

 これを、俺は死ぬ最期の瞬間まで背負っていかなければならないのだろうか。

 辛いな。

 とても辛い―――

「これが、新しい『ゼノアトラ』か……」

「うん……苦労したよ、素材は全部向こうから持ってきたし、君のデータをすべて打ちこんである。

 ソウルオーブも特注品だっ」

 だから、終わらせよう。

 あの日の夕日に決別を告げ、戦い続けた日々に別れを告げよう、そして新たな世界へと道を開こう。

 その為に、俺が―――今度こそ俺が皆の前に立つ。

 この道を歩いていこう。

 世界を救いたいわけじゃない、人類を守りたいわけじゃない、ただたった二千人の仲間を守るため

、俺はこの機体に乗る。

 この灰色の装甲をした、狼の頭をしたロボットに―――

「……なぁ。ミア」

「何?」

「―――黒く塗れるか?」

「……。わかったっ。一日待って、直ぐに整備班にやらせるからっ」

 ―――共に行こう、ガングレド。

 お前が信じた、俺が信じる未来へ、共に。

 夕闇を終わらせ、夜明けを導こう、火を繋ぎ、暗闇に火を投げ、夜を明かす小さな光を求めて、この手を伸ばし、歩いていく。

 共に、未来へ―――