2066年2月14日午前3時4分。
東京都心。
そこは周りの区画のように、暗闇に沈んだ廃虚は存在しなかった。
びっしりと辺りを覆う紅い肉のツタ。
ビルとビルの間を滴る血肉が糸を引いてまるで蛇か蜘蛛の糸の如く走り、街の景色を覆い隠していた。
肉の触手は辺りを巡回する白いエルザにも絡まり、巨大な肉瘤が装甲を破いて巨人の身体にこびり付き、周囲の紅い肉の触手が糸を引いて操り人形のように肉腫に覆われた機械を動かす。
そしてそれら紅い肉の蔦は繋がり集まるままに、巨大なドーム状の肉塊へと重なりあい、らせん状に伸びていた。
巨大なビルを添え木にして、紅い光の球体へと伸びていた。
紅い球体が脈打つたびに、世界が『浸食』される。
その脈動は世界崩壊のタイムリミット。
東京都心、都庁ビル。
紅い球体を頭上に浮かべ、無数の紅い肉の蔦を纏うままに、巨大な紅い螺旋の塔が暗闇に聳え立っていた。
雲は黒く分厚く、光一つ入らない闇が世界に立ちこめる―――
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